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【考察】蜜香とマスカテル

今日は珍しくレビューではなくお茶についての私見を語りたいと思います!たまには飲むだけじゃないんだぜっ!というところを見せておくのだ。
先に断っておきますが、経験則に基づいて語るので科学的なエビデンスはありません、ソースは俺です。
そのことが了解できる場合は先をお読みください。素人の戯言に興味ないぜ!と言うことでしたら、長いですしブラウザバック推奨です!


さて、2020年のダージリンを随分と飲んで、蜜香紅茶も飲んで……前から思っていたことがほぼ確信に変わりました。
「マスカテルってさ……やっぱりウンカ関係なくね?」と。



チャノキに付く小さな害虫ウンカが新芽を食害することで、チャノキが自己防衛のためにウンカが好まない成分を分泌。そしてその食害を受けたウンカ芽を茶に加工することでとても甘い独特な香り……蜜香が形成されると言うのは良く聞く話ですね。
これを利用した一番有名なお茶は台湾のウーロン茶である東方美人。または台湾をはじめとして日本などでも作られる蜜香紅茶。あとは少しマイナーになりますが貴妃茶などもあります。どれも甘くフルーティーな香りがするため、この仲間にダージリンのマスカテルフレーバーも加えられることが多いように思います。



東方美人
台湾茶ドットネット 東方美人 20181
(画像は台湾紅茶ドットネットの東方美人SP 2018年ロット)

蜜香紅茶
謎の紅茶X22 国産紅茶グランプリ2020 C091
(画像は2020年国産紅茶グランプリチャレンジ部門準グランプリ みとちゃ農園のみなみさやか蜜香紅茶)



ウンカ芽は茶葉が赤くなったり、アザのように見えたりするものなのですが、正直言って製茶後はよく分からない!
茶殻の状態だとまずまず分かりやすいですね。以下台湾の花蓮蜜香紅茶の画像です。
蜜香とマスカテル1
蜜香とマスカテル3
蜜香とマスカテル2

こんな感じですね。
同じ茶葉の一芯二葉と比べると凄くひねくれた見た目です。また、裏側を見ると赤毛のような毛茸がいっぱいです。

蜜香とマスカテル4

あと、見た目がボロボロでみすぼらしいです。



Gclef ダージリン2020SF シンブリ農園Ch Muscatel1
(画像はGclef 2020セカンドフラッシュ シンブリ茶園Ch Muscatel DJ-49)

さてダージリンでは……
見た目ではまるで東方美人のように色にバラ付きがありますが、これは大量の茶葉を複数人で手摘みする弊害……要は原料のサイズ等が異なることで発酵具合が微妙に異なることによるものです。じっとみれば形も随分と異なることが分かると思います。
あからさまなウンカ芽はなし。茶殻も普通。しかしこの茶葉は蜜香紅茶よりも断然フルーティーです。不思議!




飲みくらべると分かるのですが、東方美人や蜜香紅茶の蜜香の甘さと、ダージリンのフルーティーな甘さではトーンが異なります。
前者の甘さはトップノートで感じるのに対し、後者はベースノートで感じます。別の表現をすると、前者は高温時で強く香り、後者は冷めてくると強く香ります。
香りの要素が異なるのであればそれは別物。異なる要因で形成されたものと考えた方が自然です。





では一体マスカテルフレーバーとは何なのだ?ということになりますね。
一般的には「中国種のダージリンのセカンドフラッシュに見られるマスカットのような甘い香り」ということになっていますが……
私もそう思います。ただ、それだけだと不十分だと感じますね。
「ミドルノートにおいてブドウのようなフルーティーさを感じつつ、ベースノートにあるニッキのような甘い火香・ウッディーさ・蜜っぽさが重なった状態」こうなって初めて単なるブドウの香りとは異なる芳醇なマスカテルフレーバーと言える!
単にブドウの香りのするやつなら山ほどいます。


例えばシッキム、メガラヤやアルナーチャルプラデーシュ、ネパール……といったダージリンに似た気候のインド系紅茶ではブドウ系の香りがしますし、冬ならニルギリでも香ります。また、同じダージリンでもファーストですら香りますしね。また、面白いのが日本の印雑系の煎茶。印雑131や香寿、佐藤早生……これらもダージリンのファーストそっくりな香りを持っています。


季節や環境や製茶法が異なる中で唯一の共通項は、みな高標高のインドの血を持っているという点ですね。
インドに植えられているダージリン系の品種は言わずもがなですし、中国種はインドの環境で生まれ育った在来。
日本の印雑は、多田系のアッサム起源のものと丸尾文雄が持ち帰ったマニプリ系の2パターンありますが、上にあげたものはみなマニプリ系です。ちなみに、マニプリとはインドのマニプール州のことで、標高1500m程度。メガラヤ州の隣です。
どうも高所インドに関わる品種というのがポイントの一つであるように思います。


しかし、これだけブドウ系の香りがする茶葉は偏在しているのに、マスカテルを形成するのはネパールやダージリンといった極一部の産地に限られてきます。ここにしかないものとなると……独特の製茶法である強い乾燥でしょう。非常に高温で熱風を帯びせ、見た目が茶色を超えて黒くなるほどに熱して殺青を行うことで他とは異なる非常に香り高いお茶ができます。
また、中国種は単にブドウ系の香りがするというだけでなく、クローナルに比べて水分含量が少ないのでより火が入りやすいというのもポイントだと思います。


ここで不思議なのが、品種と製法がクリアされているのにも関わらず、夏の以外ではマスカテルフレーバーが形成されない点。
これは春と秋の特徴を挙げると見えてきますね。
春においては香気成分は他の季節よりも多いはず、実際ブドウの香りはします。しかし、季節のせいで発酵が弱い。
秋においては逆に強く発酵はしますが香気成分がとにかく弱い。




これらから考えられるマスカテル形成の条件は
・ハッキリとした主張のあるブドウ系の品種香
・産地特有の高温短時間による乾燥工程。ただし、焦げない程度の絶妙なコントロール技術。
・適切な発酵
以上3点です。



2020年のお茶でほぼほぼマスカテルフレーバーが見られなかったのは、コロナ禍による人材不足が大きな原因であるとは思いますが……21年以降でどうなるかが気になるところです。
また、最近は中国種以外でもマスカテルフレーバーを持つものがあります。ジュンチヤバリ茶園のジュンチヤバリ・オリジナルとか!あれはブドウというよりブルーベリーに近い気がしますが、似たような香りゆえに「明らかにマスカテルフレーバーじゃないけど、かなりそれっぽい」言わばクローナルマスカテルといえるものになっているように思いますね。



蜜香とマスカテルフレーバーが混同されがちなのは、
・セカンドフラッシュがウンカの発生時期と被るという点
・東方美人がウーロン茶故にそもそもフルーティーな香りである+熟成を良しとするためそれによって更にフルーティーな香りになる
・蜜香(ホトリエノール)の形成条件が加熱である点。前駆物質とされる3,7-dimethyl-1,5-octadien-3,7-diol(ウンカのせいでできる奴)が加熱による脱水反応を起こすことで形成される。
・そもそも同じ植物なので量はともかく、どんな茶でも香気成分が共通している。
と考えられるだけでも多くの理由があります。

ハッキリとした答えは出ないものの、2020年のおかしなダージリンへの疑問と、飲む機会に恵まれた蜜香系のお茶&印雑日本茶から得た経験をせっかくなので書いてみました。読んでいただきありがとうございました。
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